第3回川柳文学賞受賞作品『逢いに行く』

2010年6月12日、鳥取県・ホテルモナーク鳥取にて授賞式が行なわれ、大野風柳選考委員長をはじめ、多数の川柳家にお集まりいただき、賞状、盾と副賞10万円が、受賞された河村啓子氏に手渡されました。
第3回川柳文学賞は平成21年に発刊された句集のうち、申請のあった20冊を選考委員(大野風柳・大木俊秀・久保田半蔵門・平山繁夫・林えり子(作家))5名(敬称略)が選考しました。

もくじ

逢いに行く

平成21年9月1日発行
A5変形判ソフトカバー 114頁
新葉館出版
1,000円(税別)

もくじ
第七回川柳マガジン文学賞大賞受賞作品
 秋から冬へ
第一章 故郷に帰りたくなる象の尻
第二章 立葵フランスデモの帰り道
第三章 耳の奥ほら潮騒が聞えてる
第四章 たて書きの便箋を今日買いました
第五章 春になり帽子と男取り替える
第六章 六月の海を見に行く紙袋
第七章 石榴割れ私の中にある祭
第八章 二人称から三人称へと二月
あとがき
装画 河村啓子
題字 嶋澤喜八郎


総評 選考委員長:大野風柳

この賞も今年で三回目を数える。今回も五名の選考委員が時間をかけて審査に当り、一席・二席・三席の句集を推薦し、上位から三点・二点・一点とし、その合計点で決めた。
 本来であれば五名が集り、討議の中から大賞を決めるべきではあるが、最高点が八点、二位が四点とその開きが大きく大賞を「逢いに行く/河村啓子」に決めた。
 なお推薦した選考委員の講評は次の通り。

河村啓子

大野選考委員長より、賞状を受け取る河村啓子さん(右側)

・大野風柳(二位)のことば
 作者は日本画を描いており、川柳も出逢った人、風景、言葉などからの感動をそのまま表したいとあとがきに書いている。これから楽しみの作家として注目していきたい。「ストローの中で答えが上下する」「一本の木に深々とお辞儀する」が良い。
・大木俊秀氏(二位)のことば
 いかにも女性特有の感覚の上に、比喩、省略、飛躍、措辞が的確で「伝達性をそなえる詩」として川柳の理想的な作品揃いと感服した。
・久保田半蔵門氏(二位)のことば
 川柳マガジン大賞を受賞されただけのことはある。女性らしく、やさしく、読み易い。バランス感覚のとれた新鮮味のある句。柳歴の浅い割りには感性がよい。日本画の趣味あり。句集としてのまとまりがある。
・平山繁夫氏(二位)のことば  T.S.エリオットの言葉に「日常の自己を圧迫しているものから脱出した解放感だ」と詩を詠んだ後の充足感を評している。この事はもうひとりの自己を発見した歓びでもあろう。表現形態も散文的で、現代のモダニズム、いわゆる都会的なウィットがあるが、その裏面には現代に生きる現代人のきびしい心象風景が見える。

主な掲載作品

・ふいに手を繋ぎたくなる烏瓜       ・この糸が切れたら風になるつもり
・字あまりの言い訳をする秋の蝶      ・耐えてきた言葉ねとても丸いもの
・水たまり覗けば空が澄んでいる      ・まっすぐな虹に足りない色がある
・ふるさとの銀杏にメール打ってみる    ・泣いてない時雨が通り過ぎただけ
・秋がゆく美しい物折りたたみ       ・冬支度なんども母と逢っておく
・故郷に帰りたくなる象の尻        ・ふる里の訛でメール打ってみる
・グリーンピース誰かがいつも迷い子に   ・立葵フランスデモの帰り道
・行ってこい行くなと揺れるプラタナス   ・手鏡で最期は空を見てみたい
・耳の奥ほら潮騒が聞えてる        ・また一つ嘘を許して時雨ゆく
・夕焼けを見ている背なが動かない     ・恋をして秋の七草知りました
・書いたとき時雨たんだね白封筒      ・春になり帽子と男取り替える
・あの夜のジョッキは確か怒ってた     ・六月の海を見に行く紙袋
・ふっと魔がさしそうになる午後の五時   ・石榴割れ私の中にある祭
・七曜の顔を持ってる私です        ・溜息のかたちで椿落ちました
・ストローの中で答えが上下する      ・一本の木に深々とお辞儀する

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